「電車が遅れて最初の5分か10分が見逃した。こんな経験は初めてだ」
「宣伝に遅れることはあっても、本編に遅れるのは始めてってことだね」
「そうだね」
「じゃあ、映画の中身は?」
「思ったよりもいろいろな要素が詰まっていて面白かった……が、諸手を挙げて誉めるには難もある」
「君が感じた良い点と悪い点を教えてくれ」
「良かったのは、ムーミンパパの友達が、貧乏暮らしに憧れてしまうところと、それでもワインに文句を言ってしまうところだな。あと一緒にくる黒い変な生き物とか、犬とか」
「イマイチだったのは?」
「フローレンが好きになるキザ男とかキャラクターが単調すぎるよね。お金を手に入れる方法も、お金が見つからなくて探す方法もちょっと間抜けすぎる」
「他には?」
「意味ありげに出てきた海賊の皆さんが結局ストーリーに絡んでこないのは良くないと思った」
「何か肯定的なことを言ってよ」
「象しか作らないアーティスト気取りの貴族。あれはあれで良い。アーティストは同じモチーフの作品を作り続ける習性があるからだ」
「では彼は本物だったわけだ?」
「本物じゃなかったら、ホテル代の一部にもならないよ」